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 長南ケミカルお抱えの研究機関、長南生命科学研究所。略して生命研は、民間企業が運営する全国でも珍しい研究所だ。潤沢な研究費と豊富な設備が揃った、研究職を志す者なら一度は憧れる施設、らしい。  俺は電車を乗り継ぎ一時間ほどかけて町田のアパートやら一軒家やらが立ち並ぶ住宅地のど真ん中をくり抜いたように拓かれた土地に向かった。施設自体は木々に覆われて見えないようになっている。建物に入り受付に運転免許証を見せながら「長南ケミカル広報部の平津弦誠です」と名乗ると、受付にいた女性は「お待ちしておりました」と言って俺を会議室に案内した。室内には椅子と机が綺麗に並べられ、椅子は全て巨大なモニターに向いていた。俺が座るべきか立ちっぱなしでいるべきか迷っていると受付の女性はモニターの電源を入れて会議室を出て行ってしまった。  程なくしてモニターの画面に「長南生命科学研究所」の文字が浮かび上がる。それを見ていると突然モニターの方から「そこだと良く見えない。真ん中行ってもらえる?」と不自然なほどに野太い、機械を通したような声がした。俺は驚きつつも会議室の真ん中あたりに立つ。「うん。どうも」と野太い声の主は言うと、改まったような口調で「別荘の“片付け”ご苦労だった」と言った。 「あ、はい」
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