0人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「信長様!」
「どうした?サルよ」
静かな部屋。
信長と、側に仕える木下藤吉郎のみ。
普段率いている、他の家来はいない。
よく通る声で、低く問いかける主人に、藤吉郎は笑いかける。
「面白い男が、下町にいるようです」
「面白い男とな?」
普段、下町の様子は分からない。
家来は往来を歩いているが、様子を語ることはなかったからだ。
「武家の者か?農民か?」
武家の者なら、役に立とう。
そう思っての問いだった。
農民は、戦力にならないと思っていたが、目の前の男は農民の出だ。
寒い日に、懐で信長の草履を温めていたことで、評価された。
「は。それが……どちらでもないようでして」
「どちらでもない?」
どういうことだ。
訝しがる主君に、藤吉郎は何と申し上げればいいか……と言葉に迷う。
「それが、着物からして全く違っておりまして。刀も持たず、見たことないものを色々持っていると」
「着物が違うと?」
「はい。西洋のものたちが着ていたものとよく似ておりますが……どうやら、西洋の者でもないようで」
「ふむ。不思議な話じゃ。その者に会えぬのか?」
「殿が望むのでしたら、如何様にも方法はございます。しかし、危険ではありませぬか?殿の命を狙う者かも知れませぬ」
それを聞いて、信長は笑う。
「斯様なことをした場合、わしが叩き切ってくれるわ。お前も分かっておろう?のう、サル」
「わざわざ殿の手を煩わせるまでもございません。私共が仕留めます故」
「言うようになったのう。……では、早速その男を呼び出せ」
「はっ!」
最初のコメントを投稿しよう!