俺の生き様

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「なあ」 「何だ?」 「悠哉、前に言ったな?信長様が戦いに勝つって」 「ああ」 覚えていたのか。 今は1575年、長篠の戦いの年だ。 火縄銃を使って、織田信長が勝利した戦い。 三段構えはされてたされてない、諸々説はあるけど。 ポルトガルからは六年ほど前、火縄銃は伝わっていたらしい。 そんなに早くから伝わっていたのか。 俺は歴史が凄く好きだったわけでは無い。 成績は並だったし、自分で好奇心を持って調べたわけでもない。 だけど、信長のことは好きだった。 荒々しいところや、戦術に長けていたところ。 きちんと人を見ていたところ。 例えば、豊臣秀吉の件もそうだ。 自分の履物を温めていた、彼を信長は素直に評価している。 柴田勝家のことも。 人情家というか、許す心をきちんと持っている。 そういうところに惹かれた。 だから、会うことが楽しみになってしまった。 もちろん、全く怖くないわけではない。 しかし、現代よりはいい。 変わり者と会ったら、殺されたり危害を加えられたり………そういった被害に遭う可能性がある。 自分の思い通りに女性に卑劣な暴力を振るったり。 女性は女性で、自分の意のままに進まないと癇癪を起こしたり。 世の中に、優しさはもちろんある。 助けてくれる味方もいる。 いない人はない。 一人で生きられる人間はない。 親やきょうだい、恋人。 先生と呼べるひと。 好きなひとや、熱中できるもの。 それらに支えられている。 だけど、気づかないひとが多い。 いや、気づこうとしない。 そんな現代に、嫌気がさしてしまう。 ここに来たばかりの時より、それは大きくなっていった。 信長に気に入らなければ、殺されるだろう。 だが、それはある意味で正解だ。 この時代は、殺されるか殺すか。 天下を狙う合戦が続いているからだ。 信長だって、俺が何なのか分からない状態で呼びつけてるんだから。 怖い、とは思わないだろうが、危険だと思われても仕方ない。 「信長様に、それを伝えてみるといい。きっと喜ぶはずだ」 「そうだな。じゃあ、伝えてみるか」 信頼を築けてない状態で、どうやって伝えるべきかは分からないけど。 ま、何とかなるだろう。
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