俺の生き様

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嫁……、か。 「いや、俺はいないんだ。付き合っている女性はいるんだけどな」 美友………。 「ほう、どんなひとか見てみたいもんだな」 「写真ならあるぜ」 携帯を取り出す。 電波はエラー。 それはそうだ、これで繋がっていたら驚く。 「写真?」 そうか、写真もないのか。 「色々写せるんだ。……これが、俺の恋人」 美友の写真を見せる。 家族顔合わせの時のものだ。 着物を着て、微笑みかける。 「ほう。可愛いひとだ」 「ああ。結婚を考えているんだ。これは、家族みんなで結婚前の顔合わせした時だ」 「……写真、いいなぁ。俺の嫁もこうして写してたら……」 善左衛門がしみじみという。 苦しい気持ちは、俺にもわかる。 「ただ、写真がない分、いつも嫁を思い出せるのもいいけれどな。色々な想い出があるから淋しくない」 「……そうだな」 便利になった分、心が豊かさが喪われた人がいる。 機械に支配された世の中。 娯楽だった機械が、人間を支配していく。 故人の想い出を語ったり、家族団欒したり。 苦しさや悲しさを、嬉しさや楽しさを共有したり。 そういう機会は、どんどん減っていく。 行きどころのない怒りは、暴力に変わり。 自分の気持ちを吐き出せないために、ターゲットを作り誹謗する。 正義だと錯覚して、暴論を振り翳す。 -----そして、罪のない平凡に生きている人を追い込む。 自分の憂さ晴らしの為だけに。 ストレス社会、小さなことでも苦しく感じる社会。 それは、俺も感じる。 だけど、やってはいけないラインがある。 金が欲しい、金が足りない。 貧富の差は、今も昔も変わらない。 だけれど、昔の人は力を合わせて生活している。 一人だけで頑張ることをしない。 一人の世界で生きることもしない。 それを、今分かった。 だって…… 「おお。善左衛門!その男が悠哉か?」 「一太から聞いたぞ」 「みんな、いらっしゃい」 「善左衛門、それは何だ?」 「これか?写真ってやつらしい」 「おお、見たい」 「悠哉、いいか?」 本当、善左衛門はいいヤツだな。 「ああ」 ここで、学ぶことは多いな。
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