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「私と一緒に居ても、幸せにはなれないよ。」
「そんなことは僕が決めます。」
高校時代には勇気がなくて言えなかった言葉を、僕は勇気を出して口にした。
「僕はずっと、高校時代に先輩に告白したあの日からずっと、先輩のことが好きでした。そして、今も好きです。」
数年越しの告白。
そう、時に遠ざけたりもしたけれど、僕の気持ちの根っこの部分は何も変わってなかった。
先輩のことが、出会ったあの日からずっと、好きだったんだ。
先輩は、困ったように苦笑いを浮かべたが……。
「……まずは彼氏と別れる。順番はちゃんとしないとね。」
そう言って、僕に微笑んだ。
僕はその表情と言葉がOKだと悟った。
「ゆっくりでいいです。僕はずっと待ってますから。」
もう、何も不安はなかった。
僕が、先輩を幸せにしていこう。そう思ったから。
「ねぇ、どうして泣いてるの?」
先輩が指で僕の頬を拭う。
店内のテレビからは、梅雨明けを知らせるニュースが流れていた。
「あ、雨……止んだね。」
店の外に出た僕たち。
先輩が嬉しそうに両手を広げる。
そんな先輩を見ながら、僕は呟いた。
「まったく……。僕は雨上がりにはいつも、泣いてばかりだ。」
悔しくて泣いた。
辛くて泣いた。
後悔して泣いた。
心配して、泣いた。
毎度毎度、梅雨の終わり、雨あがりの時に。
でも、今回は違う。
心から嬉しい、幸せだと思った涙。
これからは、ずっとこんな涙を先輩と二人で流していけたらと思う。
「ねぇ、これから付き合うんだから、私のことはもう名前で呼んでよ。」
「え……名前、ですか……。」
「あと、敬語も禁止。学校の2年は大きいけど、社会人になってからの2年なんて、同じようなものだよ。」
これからは、先輩の笑顔を守り続けていこう。
もう、悲しい思いはさせない。
一緒に、幸せになろう……。
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