雨上がり、僕はいつも涙。

20/20

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「私と一緒に居ても、幸せにはなれないよ。」 「そんなことは僕が決めます。」 高校時代には勇気がなくて言えなかった言葉を、僕は勇気を出して口にした。 「僕はずっと、高校時代に先輩に告白したあの日からずっと、先輩のことが好きでした。そして、今も好きです。」 数年越しの告白。 そう、時に遠ざけたりもしたけれど、僕の気持ちの根っこの部分は何も変わってなかった。 先輩のことが、出会ったあの日からずっと、好きだったんだ。 先輩は、困ったように苦笑いを浮かべたが……。 「……まずは彼氏と別れる。順番はちゃんとしないとね。」 そう言って、僕に微笑んだ。 僕はその表情と言葉がOKだと悟った。 「ゆっくりでいいです。僕はずっと待ってますから。」 もう、何も不安はなかった。 僕が、先輩を幸せにしていこう。そう思ったから。 「ねぇ、どうして泣いてるの?」 先輩が指で僕の頬を拭う。 店内のテレビからは、梅雨明けを知らせるニュースが流れていた。 「あ、雨……止んだね。」 店の外に出た僕たち。 先輩が嬉しそうに両手を広げる。 そんな先輩を見ながら、僕は呟いた。 「まったく……。僕は雨上がりにはいつも、泣いてばかりだ。」 悔しくて泣いた。 辛くて泣いた。 後悔して泣いた。 心配して、泣いた。 毎度毎度、梅雨の終わり、雨あがりの時に。 でも、今回は違う。 心から嬉しい、幸せだと思った涙。 これからは、ずっとこんな涙を先輩と二人で流していけたらと思う。 「ねぇ、これから付き合うんだから、私のことはもう名前で呼んでよ。」 「え……名前、ですか……。」 「あと、敬語も禁止。学校の2年は大きいけど、社会人になってからの2年なんて、同じようなものだよ。」 これからは、先輩の笑顔を守り続けていこう。 もう、悲しい思いはさせない。 一緒に、幸せになろう……。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加