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「お前の先輩、既婚者と付き合ってたな。不倫かよ……」
店の仲間たちが僕のところに集まっては先輩の話をする。
お客様の噂話など、本当はしてはいけないことなのだが、そんな話が出てしまうほど、先輩は他の男性からも魅力的に映ったのだろう。
「そうみたいですね。僕も、知らなかった……。」
知らなかった、というよりも『知ろうとしなかった』が正しいだろう。
僕は先輩の卒業式の日に渡された連絡先に、一切連絡をしなかったのだから。
もし、連絡を取り合っていれば、今の彼氏のことも知ることが出来ただろうし、もしかしたら既婚者と付き合うこともなかったかもしれない。
僕が知っていたら、止めていただろうから。
その後、先輩は夕食を終え、彼氏と仲睦まじく退店していった。
「また来るね。キミがいるなら来やすいしね。」
そう笑顔で店を後にする先輩の姿を、僕は複雑な心境で見送った。
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