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それからも、先輩と彼氏は店に来た。
少しずつ頻度が減り、少しずつ会話が減っていった。
その頃、僕は先輩に異変を感じていた。
梅雨時期の蒸し暑い日が続く毎日。
そんな中でも先輩はいつも長袖だったのだ。
僕が覚えている限り、先輩は長袖が好きなわけではない。
ノースリーブや半袖の私服をたくさん持っていて、そのどれもよく似合っていた。
夏の先輩の姿は、キラキラしていた。
だからこそ、不自然だったのだ。
ずっと長袖を着て、無理に笑顔を彼氏に見せようとしている、そんな先輩の姿が。
「ご馳走様。いつも美味しいからこの店、好き。」
お会計の時、いつも私に微笑みかけてくれる先輩。
「先輩、今度は一人で来てください。休みの日でも、僕……出てきますから。」
そんな先輩に、僕は勇気を出してそう言った。
今のままで、先輩は幸せなのだろうか?
このままでいいのだろうか?
それが、知りたくて。
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