雨上がり、僕はいつも涙。

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冷やかすでもなく、先輩は翌日一人でやってきた。 蒸し暑い夕方。 僕は店長に頼んで早く上がらせてもらい、先輩と個室に入った。 「どうしたの? そんなに怖い顔して……。」 先輩は、僕が緊張しているのを察し、わざと僕を冷やかすように言う。 僕は、表情を変えないまま言った。 「先輩の彼氏さん、既婚者ですよね?」 一瞬、先輩の表情が凍り付いた。 「不倫は、良くないです。先輩だったら、きっともっといい人が……」 「貴方も、皆と同じことを言うのね。」 僕が話している途中で、まるで話を遮ろうとするように、先輩はいつもより少しだけ低い声で言った。 「不倫は良くない、ちゃんとした人を探せ。みんなそう言うわ。でも……どうして私があの人を好きになったのか、誰も聞かない。私が誰を好きになろうと勝手じゃない!」 僕はこの時、初めて感情を露わにする先輩の表情を見た気がする。
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