僕の罪と君の記憶

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 俺は最初は家に戻るつもりだったのだが、なんとなく、そんな気になれなくて、頭の中の諒さんの笑顔を忘れるためにめちゃくちゃに歩いた。闇雲に、そのうち意識的に歩いて歩いて、俺は俺の面影を探した。  ねえ、本当の俺がここにいたとしたら、あんな笑顔を浮かべる諒さんになんて声をかけた?  もちろん、返答はない。  雪はどんどん大粒になっていく。  白く町が覆われて、まるで俺の頭の中みたいだと思った。何もない、真っ白な頭。  ふと、足が止まった。交差点の雑居ビルの2階の看板に目が留まる。『竹中教室』とあった。あのスケッチブックの裏に書いてあった四文字に、俺は吸い寄せられた。  時刻はすでに21時になろうとしている。それでも、その教室からは蛍光灯の光が漏れていた。2階へ続く階段は薄暗い。
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