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和也の手には、この家の鍵が握られていた。キーホルダーは2人で選んだナポレオンの絵画チャームだ。
「……」
僕は言葉が出なかった。和也がこの家の鍵を開けて入って来るのを見るのが久しぶりすぎた。ほんの少し前まで日常風景だったそれが、いやに胸にささった。
「諒さん」
和也は僕を見据えた。
「俺と、どんな関係でしたか?」
僕は返答に窮した。
「……」
「何で答えてくれないんですか?」
「なんと、答えたらいいか……」
僕は躊躇い、それから尋ねた。
「なぜ、そんな質問をするんだ?」
「これ、俺が描いた絵ですよね?」
彼は玄関からリビングへ続く廊下に飾られた絵の一枚を指さした。先ほど、僕が彼を試すのに使った絵だ。
僕は驚愕する。
「和也、記憶が……?」
「いえ、そういうわけではありません。ただ、俺と諒さんは、ただの友達じゃなかったんだって思うんです。特別な、関係でした。そうでしょう?」
僕は顔を覆った。小さく息を吐く。
僕はぽつりぽつりと僕たちの過去を話した。
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