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「証拠があるんだぞ! お前が他の男とハグしてる写真!」
和也はすばやく手を洗い流すと、スマホを操作して画面を突き付けてきた。
そこには、確かに僕ともう一人がタクシー乗り場でハグしている写真だった。隠し撮りのようなその写真は、見ようによれば、恋人同士がデートの終わりに別れを惜しんでいるように見えなくもない。角度的に相手の男の顔は見えないが、背中一面に髑髏の刺繍が入ったド派手なファッションだ。僕はこの服装の人物に心当たりがあった。
「これ! 見ろよ! 日付は俺が事故にあった日! あの日、俺、見たんだ!」
和也が言い募る。
——なるほど、この写真が原因か。
「……」
「……なんか言えよ」
僕はため息のあと、観念して相手の正体を吐いた。
「……これ、父だ」
「え」
「ほら、これ。家族旅行のときの写真だけど、同じ服を着てるだろう」
僕もスマホを出して、父の写真を見せた。写真には派手なピンクのジャケットを着た母と、髑髏刺繍のスカジャンを着た父がポーズを決めている。
「ななな、なんで親父さん」
「いま、父は若者ファッションに夢中なんだよ……」
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