僕の罪と君の記憶

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 自分に言い聞かせて、つとめて冷静を装った。それでも自分の感情は抑えきれない。 「ホットコーヒーでいいかい」  尋ねると、和也がおずおずと頷いた。  コーヒーメーカーが控えめな音を立てながら動き出す。途端に香ばしい匂いが部屋に立ち込める。 「じゃがいも、貰おうか」 「あ、はい、どうぞ」  少女趣味な彼の母親が選んだのであろう、白とピンクの紙袋。その中に鎮座する無骨なじゃがいもたち。僕は不似合いなふたつに苦笑して、ゆっくりとひとづずつ丁寧に取り出していった。  その間、目だけは彼を追っていた。この部屋を見て、彼が何か思い出すのではないか、と淡い期待がそこにあった。  しかし、和也は目だけでダイニングとリビングを一瞥したあと、行儀正しく椅子に座っただけだった。  僕は出来上がったコーヒーを片手に和也に尋ねた。 「砂糖とミルクはいるかい?」 「あ、いらないです」  彼はそう答えた。僕はまた息を吐いた。まただ。また僕は和也を見失った。  カップを彼の前に置くと、彼はそれを両手で包んで、ゆっくりと息を吹きかけた。湯気が彼の呼気に合わせてゆらゆらと立ち上がって消えていく。 「大学、どうですか?」
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