僕の罪と君の記憶

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 絵に手を伸ばす。ガラスの額縁に入れられたその美術品たちは、いまも僕には理解できない。  地震が起きた時に危ないと何度言っても、和也はガラスの額縁にこだわっていた。  そのこだわりも、彼は覚えていない。  僕たちはこれから、別の道を歩くのかもしれない。  あの日の和也の別れ話が、いよいよ身に迫って感じられた。僕はどこかで彼の記憶が戻ってハッピーエンドを迎えるのだと信じていた。しかし。  あんなに好きだった絵画の描き方を忘れて、自分が描いた作品も忘れて、苦手だと言っていたコーヒーをブラックで飲んで。  和也は変わっていく。  僕はそのことに、引き裂かれそうだ。和也が別れを切り出した理由も、いまとなっては誰も知ることができない。  つらい。しかし、それ以上に、安堵があった。彼の人生を壊してしまったという罪を、いまようやく彼の記憶とともに闇に葬ることができるのだ。 *****(和也視点)  俺は記憶を失っているらしい。  たまに、そのことが無性に怖くなる。自分の根っこがちぎれてしまって、どこかに吹き飛ばされるんじゃあないかという恐怖だ。
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