不義の澱

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 このような対照的な2人であったが、あるとき講義で隣に座ったことから友人になった。同性愛は、この宗教が強く国民を支配しているメルカ国では禁止されている。しかし、東方とケランの出身地であるガラ国では認められていた。そして、男を求めている空気というのは、お互いにわかる。  留学生の寮には男しかいない。禁欲的な寮内で同性愛というのはそれほど珍しくもなかった。  彼らは惹かれ合い、ついに愛し合うにいたった。  言語を学ぶにはまず恋人作りから、という先人の言葉は正しい。アルスカは大学で4年掛けてメルカの言葉を話せるようになった。それに対して、ケランの母語であるガラ語を理解するのには半年で十分であった。  アルスカは三か国語を身に着けたことで、自分が立派な外交官になれると信じた。  しかし、それはアルスカの恋ゆえに叶わなかった。卒業と同時に、ケランはアルスカに母国に来るように言った。ケランの家は金貸しをしていて、ケランも国に戻ればその仕事をする。収入は一般的な商人や農民よりはるかに高水準だ。彼はそのうち自分の店を持つつもりだと言った。
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