10人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
アルスカは指の先を見て、顔をしかめた。しかし、相手が上官であるので、すぐに平静を装った。
「……まぁ、知らないこともないですがね」
「会ってきたらどうだ? お前、ちょっと根を詰め過ぎだ」
アルスカは嫌々ながら外に出て、その男に声を掛けた。
「なんでここに?」
アルスカの質問に、男は応えない。
「アルスカ、俺が悪かった」
そこに立っていたのは、もう二度と会うことがないと信じていたケランであった。
アルスカは首を振った。この悪夢が早く終わってほしいと思った。
「怒ってない。もう忘れた。帰ってくれ」
「話を聞いてくれ」
「聞きたくない。それが用件なら、もう帰ってくれ。私は怒ってないし、もう気にしてない。二度とここに来ないでくれ」
ケランはなおも食い下がる。
「誤解なんだ」
アルスカは急に腹立たしい気持ちになった。彼はこれまで悲しむばかりであったが、ここにきて忘れていた怒りがこみ上げ、止めることができなくなった。
「そうであることを願って、何回も確認して! 調べたんだ! 結果はこれだ! もういいだろう!?」
つられて、ケランも声を荒らげる。
最初のコメントを投稿しよう!