不義の澱

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「どうするつもりなんだ? この国はお前も知ってる通り、東方の異邦人には厳しいところだ。こんなところで生活できるのか?」  アルスカは強く言い切った。 「どこの国でも、私は異邦人だ」  故郷が焼け落ちてから、どこへ行ってもアルスカは異邦人だ。そして異邦人だからと見くびられるのにも、慣れてしまった。そんなことよりも、今はケランに侮られる方が耐えがたい。 「でも……」  なおも言い募ろうとするケランに、アルスカは言い捨てた。 「もう放っておいてくれ。私たちは終わった」  ケランは肩を落として帰っていった。  アルスカはなぜここがばれたのかと首を捻ったが、よく考えてみると、ここしかないことを思い出した。  アルスカの故郷はいまだに戦火がくすぶり、とてもではないが帰れない。そしてガラで私の知り合いは皆ケランの知り合いでもある。ケランはその知り合いに連絡をとり、アルスカがガラにいないことに気が付いたのだ。  そうなると、次にアルスカが行く国といえば、メルカしかない。  アルスカはため息をついた。それから頬を一度叩くと、彼は仕事に戻った。 *
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