不義の澱

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 ケランに厳しい言葉を浴びせて以来、ケランはアルスカに話しかけてくることはなくなった。しかし、彼の姿を見ない日はない。ケランはいつもフェクスの家の前にじっと立って、アルスカの出勤と帰宅を見ていた。  アルスカはケランを不気味に思った。それは、フェクスも同意見であった。  ケランはたびたびフェクスにアルスカについて仲介してほしいと依頼しに来た。フェクスが首を振ると、ケランは烈火のごとく怒鳴り散らした。フェクスはその様子を見て、尋常ではないと思った。  2人は相談して、憲兵に窮状を訴えることにした。 「なんとかしてください」  アルスカは憲兵に向かってこう頼んだ。しかし、異邦人であるアルスカを救おうとする憲兵はいない。アルスカは歯がみした。  貧しい東方出身のアルスカと、裕福なガラの出身であるケランでは、アルスカの分が悪い。これが、もし彼がか弱い女性であったなら、または彼がメルカ人であったならば、また違った対応をされたのは間違いない。
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