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「3日ほど前でしょうか」
「早かったんですね。葉書には春祭りの後と書いてありましたが……念のため寄ってよかったです」
しばらく当たり障りのない会話をした後、フェクスは気楽に笑ってアルスカの背を叩いた。
「歳をとったな、お互い」
それを合図として、彼らは青年のころに戻ったように笑いあった。
「相変わらずお前の発音は完璧だな。この国に来るのは久しぶりじゃないのか」
フェクスに尋ねられて、アルスカは大学を卒業してからの年数を指折り数えた。
「14年ぶりかな」
「それはすごい。ふつう、言語ってのは使わないと忘れるらしいが、お前は前よりうまくなってる」
「ありがとう。少し前まで通訳の仕事をしていて、話す機会があったおかげかな」
「それはいい商売だ。こんなご時世だ。さぞ儲かっただろう」
遠慮のない物言いをする友人に、アルスカは苦笑した。
「まぁ、明日のパンに困らないくらいさ」
「もったいないな。お前がこっちの国の生まれならもっと稼げるのに」
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