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「結婚がご褒美だと本気で思っていらっしゃるの? 私、あいにく獣と番になる趣味は持ち合わせておりませんの」
「んな、な、ななななな!? わしの息子が獣だとお!? 小娘が! こっちが優しくしてやっているのにいい気になりおって! 協力する気になるまで、ずっとここにいるがよいわ!」
手錠かけて監禁しておいて、優しいとはこれいかに。
前の国は足枷をはめた上で、食事にしびれ薬を混ぜていましたっけね。
逆らったら毒薬。
けたたましい音を立てて鉄の扉が閉ざされた。向こう側から錠のかかる金属音が虚しく響き、重くて荒々しい足音が遠のいていく。
鉄格子のはまった窓から、断崖絶壁が一望できる。
私の未来は、飢死、もしくは金欲と色欲にまみれた野獣のペット。
あんなのが一国の王様?
私の命をゴミみたいに扱う人が、人々の上に立っているの?
誰も彼も、口を開けば
聖女様、傷を癒やしてください。
不治の病の母を助けてください。
助けて、助けて、助けて。
誰も私を助けてはくれないのに勝手すぎない?
さも当然のように治癒魔法を使えと迫る。
嫌だと言えば「悪魔」「薄情者」「人の心がないのか」とくる。
私の気持ちを考えてくれないのに、なんでそんなことを言えるのかしら。
私は誰かを助ける存在として生まれて、治癒魔法だけを必要とされて。
やってられないわ。
鉄格子のはまる窓にもたれかかって、どこまでも広がる空を眺める。
「ここから出たい。どうして聖女に生まれただけで、そんな簡単な願いも叶わないのかしら」
「自由になりたいか?」
誰もいないはずなのに、私の独り言に、誰かが答えた。
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