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それってなんだか寂しい。
私は自分が一人なのは寂しいと思わないけれど、この人が独りぼっちなのは寂しい。
出会ってから一度も、この人の笑顔を見ていない。
楽しいと思うこと、笑うことあるのかしら。
私自身、楽しいと思って生きたことがないわ。
人はどんなときに楽しい、嬉しいって思うのかしら。
エルドラはどうすれば笑顔になれるのかしら。
私、どうかしている。
一人で生きたいとすら思っていたのに、よりにもよって、魔王の世話をしようなんて考えてる。
「私が毎日掃除する」
「……正気か?」
「正気。私に幻影系の魔法は効かないわ。自由に生きていいと言ったのは貴方でしょう。だから、今やりたいこと、ここを掃除することよ」
言っている自分でも異常なことを申し出た自覚はある。
ここは本来なら敵地の、総大将の部屋。
その総大将は、私を助けた恩人。
しかも魔法を使わせないし、組み敷いて子を産めと迫ることもない。
とても、変な人だ。
「其方は変わっているな。いや、変わらないのか」
そう言って、エルドラは初めて口元に笑みを浮かべた。
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