冷遇された聖女は孤高な魔王の寵愛で甘く溶かされる

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 ごきげんよう。サラヴィエと申します。  私は今、知らない国のどこかの塔のてっぺんに閉じ込められ、手錠で繋がれています。  囚人のような扱い、ちっともご機嫌よろしくないですわ。  世界にただ一人だけ、癒やしの魔法を持つ聖女。  それが私。なんで私は、望みもしないのに聖女なんかに生まれてしまったのかな。  聖女という響きは聞こえがいいけれど、私にとっては要らないオプション。  こういう、望みもしないことに巻き込まれてしまうのだから。  人間の国同士の戦争。  戦争で負傷した兵士を癒せ?  そもそも戦争しなければ怪我もしないのに、私を使うのはおかしいわ。  重い鉄扉が開かれる。  繋がれた私の前に、金冠をした髭面の男が出てきた。 「聖女サラヴィエ。わしの国の兵たちを癒せ。死に至る傷も、そなたなら治せよう。お前さえいれば、絶対に戦争で敗北しない無敵の兵団の誕生だ。わしの国が人間の頂点、覇権を握るのだ!!!!」 「お断りです。私を無理やり拉致したことを先に謝罪なさい」 「ほっほっほ。これは口が悪い。タダでとは言わん。大人しく言うことを聞いたら息子の妾にしてやろう。もしかしたらそなたの産む子どもも癒やしの魔法を持つやもしれぬからの」  トウモロコシみたいなあごひげをなでなで、人の皮をかぶった獣が鳴く。  欲望が隠しきれてなくてヘドが出る。  舌打ちしなかっただけ褒めてほしいわ。ケッ。こちとら十七年生きてきて、これが百回目の誘拐だ。毒舌家にもなるっての。
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