意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 レオルゴールは怒り心頭であった。  彼は捕らえられた牢の中で抵抗を試みたが、緊縛された両腕ではどうすることもできなかった。牢は狭くて汚らしくて、それでいて頑丈であった。  鉄格子に頭蓋をぶつけてみても、ただ羊が屠殺場でめぇめぇ泣くのと変わらない。いっそ、レオルゴールも羊のように哀れに泣き叫べばかわいげもあるのだが、それは彼の高すぎる矜持が許さないのだ。 「ああ! ちくしょう!」  彼は牢の中を芋虫のように這いずり回った。自慢の金色の髪は砂にまみれ、白桃の頬に血がにじんだ。両足をきつく縛られ、彼には歩き回る自由もない。いま、彼に許されることはただ言葉を吐くことのみである。  人間とは窮地に追い込まれた時、頭の中は空っぽになり、そこに恨みだけが渦巻く。その例に漏れず、黒い感情に包まれた彼は、憎悪の言葉を吐き出した。 「覚えてろよ……。俺には使命があるんだ! 必ず、必ずその使命を果たしてみせる!」   彼はこちらに聞き耳を立てている見張りの兵に聞こえるように叫んだ。しかし、彼にこの状況を打破する術などないのである。 *  レオルゴールは類稀なる魔術の才に恵まれた。
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