意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 しかし、残念なことにレオルゴールは魅了の魔法を使うことに慣れ過ぎて、人を惚れさせる術などまったく知らないことを失念していた。  見よう見まねでケントガランに秋波なるものを送ってみたこともあるが、効果があるのかないのかわかりもしない。  要するに、レオルゴールは手詰まりの状況なのだ。  そのような穏やかな日々の中で、レオルゴールはふと新しい魔法を思い付いた。  これまでの人生においても彼はたびたびこうして新しい魔法を思い付くことがあったが、感覚に依存している彼の魔法知識ではなかなか実現することが難しかった。しかし、いま彼は魔法を体系的に学び直したことで、それを実現させる道筋が見えたのだ。  レオルゴールは紙とペンを取った。  そこからのレオルゴールの集中はすさまじかった。  伝説の魔法使いもかくやというほど、魔法陣を書き出してはなにかをぶつぶつと言う。時には何時間もかけて書き出した魔法陣を狂ったように破り捨て、重篤な精神病患者のように頭を掻きむしった。彼は本に埋もれて眠り、ペンを握りしめたまま起きた。
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