意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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「……ひどい怪我だった。ほんとうに、死んでしまうかと……」 「ケントガランが助けたのか?」  ケントガランは頷いた。 「……君はひどい怪我で、3日も生死をさまよったんだ。耐えかねて、時魔法を使った」 「時魔法?」 「時を巻き戻したんだ。今日は君が魔法を使う1日前だ」 「ああ、だから」  レオルゴールは納得した。そして同時にひどく落胆した。伝説とまで言われる時魔法を使ってケントガランを驚かす魂胆であったのだが、ケントガランはすでに時魔法を習得していたのだ。  レオルゴールの鼻柱は粉々に叩き折られた。 「生きていてくれて、よかった……」  己の分限を見せつけられ、落ち込むレオルゴールを、ケントガランは静かに抱きしめた。 「ケントガラン?」  レオルゴールは驚嘆した。冷静沈着な頭脳、泰然自若な態度、レオルゴールが唯一認める魔法使い。そのケントガランが、涙を流していた。 「もう、もう馬鹿な真似はやめてくれ。時魔法は過去へは戻せても、未来には行けないんだ」 「泣くことないだろう」 「君を失うと思った」 「大袈裟な奴め」  レオルゴールは好敵手を手懐けたと得意になって、鼻の穴を膨らませた。
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