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ケントガランがクッキーを載せた皿を持って入ってきた。アフタヌーンティーには少し早い時間であったが、レオルゴールはバルコニーに彼を誘った。
春の盛りである。庭の花は咲き誇り、風はぬるく頬を撫でる。
次の春の訪れとともに、ケントガランとレオルゴールは寄宿舎へ入る。レオルゴールの後見人はケントガランの父親である。この形で寄宿舎へ入るのはレオルゴールにとっても初めてのことであった。
とはいえ、卒業するときには、どちらが王子の婚約者にふさわしいのか、雌雄を決しているのは変わらないはずである。
いくつかのクッキーを飲み込んで当たり障りのない会話をしたあと、レオルゴールは切り出した。
「王子との婚約の話を聞いた」
「ああ、それ。君はどう思う?」
「……本音で話しても?」
「もちろんだ」
「婚約しないでくれ」
レオルゴールは歯に衣着せず、己の希望をそのまま口にした。レオルゴールがここまで愚直にものを言うことは珍しい。彼はケントガランに対して小細工をしても仕方ないことを知っているのだ。
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