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王子の婚約相手がケントガラン以外であるなら、あとから排除することができる。なんとしても、婚約をさせてはならないのだ。
レオルゴールの言葉をどのように捉えたのか、ケントガランは身を乗り出した。
「なぜ? なぜ婚約してほしくないんだ?」
「なぜって……」
レオルゴールは口ごもった。自分が王子の配偶者になりたいからだとは、庶民の身分のままである今は口が裂けても言えない。
レオルゴールが答えないでいると、ケントガランが次の質問をした。
「私が婚約するのが嫌なのか?」
「……」
「なぜ? 寂しいから?」
「……それも、あるかもしれない」
レオルゴールな素直な少年然として頷くと、ケントガランはさらに身を乗り出した。
「私たち、とっても仲良しだと思うんだ。隠しごとはなしだよ」
「それはわかってる」
二人の間に沈黙が落ちた。レオルゴールは居心地が悪く、場をつなぐためにクッキーを頬張ったが、味がしなかった。
ケントガランはそんなレオルゴールをじっと見つめて、ふっと笑い、それから口を開いた。
「私も、隠してることをひとつ言おう」
「はい?」
「私、君が好きなんだ」
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