意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 何十冊目かの本を床に放り捨てて、レオルゴールは膝をついた。床には本棚のすべての本と、レオルゴールが書き記した紙のすべてが散乱している。  ――ケントガラン……お前は、お前は……、俺は…!  レオルゴールはこのとき初めて涙を流した。  彼の高すぎる矜持ゆえに認めることのできなかったことを、ようやく認めるときがきたのだ。 「ケントガラン、お前の勝ちだ」  ついに彼は敗北を認めた。もはや彼には、ケントガラン相手に戦う気概がない。そして毒を抜かれたことで、レオルゴールはようやく自身の心を知った。 「お前が、大切だ」  脳内にあるのは、ケントガランとの機知に富んだ会話の数々である。レオルゴールはこれほど楽しく魔法について語り合うことのできる相手を知らない。  神童と呼ばれるケントガランと、天才の誉れ高いレオルゴール。  レオルゴールは、長い時の迷宮の最果てで、ようやくケントガランだけが同じ孤高の存在であり、理解者たりえることに気が付いた。 *  気が付いたとして、それを行動に移すのはそうたやすいことではない。
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