意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 特にレオルゴールのような肥大した矜持を持つ人間にとっては、好敵手に愛を伝えることは伝説の魔法を扱うことよりも難しい。  レオルゴールが涙を流した日から数日経ったが、彼はいまだにケントガランに話しかけることができないでいた。  晩餐の席で会っても、不自然に目をそらし、「ああ」とか「ええ」と返事をするのがやっとである。  レオルゴールは我ながら自身の態度はひどいものだと思ったが、彼の矜持が邪魔をしてどうすることもできない。  そうしてひと月が過ぎたとき、ついにケントガランがレオルゴールの部屋にやって来た。 「やあ、レオルゴール」 「や、やあ……」  ケントガランは澄ました顔でソファに腰掛ける。部屋の主であるはずのレオルゴールはどこに座ればいいのか分からず、立ったままそれを眺めていた。 「座らないのか?」 「あ、ああ」  レオルゴールは自分の体が案山子になったと思った。床に足が縫い留められているように動けない。 「どうした?」 「う、あ、いや……」
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