6人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
視線を下に落とし、彼は自身の足を睨みつけて叱咤した。動け動けと命じても、もはや彼の意思ではどうすることもできない。ただ心臓が跳ねて、耳元で大きな音を立てている。
気持ちを自覚したことで、これまでケントガランにどう接していたのかも忘れてしまったのだ。
挙動不審なレオルゴールの心境を、ケントガランは的確に読み解いた。
「ちょっと素直になったと思ったんだがな……君は肩肘を張り過ぎだ」
揶揄されたと感じて、レオルゴールは咄嗟に反駁した。
「な! 誰が肩肘を張っていると!!」
「落ち着け。座ったらどうだ?」
レオルゴールは数拍の後にケントガランの真正面に座った。受けて立ってやるといわんばかりに胸を張り、顎を突き出した。
「君って恋愛したことあるのかい?」
唐突にそう言われて、レオルゴールは虚を突かれた。
「は?」
「私はない。私から見ると、みんなかぼちゃかじゃがいもだ。友人つき合いでさえ退屈だ。わかるだろう?」
「……」
「王子と婚約して、この国のために粉骨砕身働くのも悪くはないが、私は貴族だ。別に婚約しなくたって、私の力はこの国のものだ」
最初のコメントを投稿しよう!