意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 東に大国アレンギルドが迫り、北の蛮勇民族は隙を見せれば略奪にやってくる。南の少数民族たちは面従腹背で、いつ背を打たれるとも限らず、西の海では海賊船がこちらに船首を向けている。  そのような局面において、外交のために国家予算の半分を費やしてダンス会場を作った貴族たちの、なんと滑稽なことであろうか。  レオルゴールはこの国を愛していた。  この国はいま、160年前の栄光にあぐらを搔いている愚かな貴族たちに任せられる状況ではないと断じ、彼は自分こそがこの国の英雄になるのだと立ち上がった。  レオルゴールの計画は単純明快であった。  彼は『魅了』の魔法を得意としていた。他者を虜にして操るこの魔法は、催眠や服従などの野蛮な魔法とは比べ物にならないほど強力に心を支配することができる。また、ゆっくりと侵食していくため、看破されにくいという特性もある。  レオルゴールは権力の中枢にいる貴族たちにこの魔法をかけて、影からこの国を救うことを目論んだのだ。
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