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ノックも忘れて部屋に飛び込むと、ケントガランはちょうど着替えの途中であった。
「あ、え、あ、すまない……」
「いや、もう済むよ。……君の方から訪ねてくるなんて珍しいこともあるものだね。私に会いたかったの?」
「からかうな!」
咄嗟に声を荒らげてしまったが、レオルゴールはすぐに息を吐いて呼吸を整えた。いつも高すぎる矜持ゆえに素直になれない彼であるが、今日ばかりは素直にならなければならない。
珍しいレオルゴールの様子に、ケントガランは片眉を跳ね上げた。
「その、話があって来た」
「なんだい?」
ケントガランは椅子に腰掛けて、レオルゴールにも座るよう促した。レオルゴールは首を振ってそれを拒否して、足取りもあらくケントガランに詰め寄った。
「聞け」
レオルゴールはケントガランの肩に手をおいて、その切れ長の瞳を睨みつけた。
「好きだ!」
簡潔に、半ば怒鳴るように叫んだ彼の本音は、彼の高すぎる矜持を思えば精一杯の告白であった。
唐突なことに、さしものケントガランも言葉がない。口をただ魚のようにぱくぱくと動かして、それから顔を朱に染めた。
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