意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 対してレオルゴールはすっかり憑き物の落ちた顔をしていた。 「あ、ありがとう、私も、君が好きだよ、愛してる」  ケントガランがようやくそう返すと、レオルゴールは満足げに頷いた。 「知ってる。もしこのまま離れ離れになったとしても、忘れない」  レオルゴールが不穏なことを言ったので、ケントガランは驚いた。 「離れ離れ? 誰と誰が? まさか、君と私の話かい?」 「そうだ」  ケントガランは困惑した。 「なぜ?」  レオルゴールは口をつぐんだ。どう話せばいいのか、彼には見当もつかない。  レオルゴールが恐れているのは、再び時が巻き戻ることだ。明日朝起きたら、もう彼は10歳の少年に戻り、両親と医者がこちらを覗き込んでいるかもしれない。そう思うと、いてもたっても居られなかったのだ。 「なんでもない。ただ、言っておきたかったんだ。お前に感謝してるし、出会えてよかった」 「今生の別れみたいなことを言わないでくれ。明日には新居に移るんだよ?」 「わかってる。これからもよろしく頼む」
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