意地っ張り魔法使い、X回目の人生でも臍を噛む

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 彼が杖をひと振りすると、3年もかけて何重にも施した魅了の魔法がたちまち雲霞のように消え去り、あとにはレオルゴールへの愛をすっかり忘れて間抜けな顔をした王子たちが立ち尽くしていた。  正気に戻った彼らは己のこれまでの醜態を思い出して顔を伏せてむせび泣き、レオルゴールを罵倒した。  そしてレオルゴールは投獄され、今に至る。 「なんて馬鹿な国だ!」  牢の床に転がったまま、レオルゴールは毒づいた。  あの男、ケントガランはとんでもない男だ。それは、ここまで綿密に計画を立てたレオルゴールをたやすく牢に追いやったことで十分に証明できる。しかし、真に証明されてしまったのは、ケントガランほどの才能をもってしても、王子と婚約という形でしかこの国の頂に上がれぬという事実である。  レオルゴールは腐りきったこの国に唾を吐いた。  その夜、足音を忍ばせて一人の男が鉄格子の向こう側に立った。この男は人目を忍んでやって来たらしく、フードを目深く被り、さらにその下に銀の仮面を被って顔を隠していた。男は呪文を唱えて見張りの兵を眠らせると、その懐から牢の鍵を奪った。
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