僕の中のボクと君の中のキミが出逢ったら

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「通販で買ったものが今日あたり届くかもしれない」  朝トーストと目玉焼きを食べながら徹がいった。 「はい、わかりました」 「どうせわかっちゃうから、いっとくけど、あいつらに頼まれていたものを買っといた」 「頼まれたもの?」 「プレイ用のおもちゃだよ」  勝手に何か買われるより、自分の目の届く範囲でやってもらいたいからねと、苦笑しながら続ける。  遥香はどんな顔をしていいかわからない。人格は美央でも自分がされることを想像して耳まで赤くなった。  徹がそんな遥香の手を握り、「俺は使わないから安心して」  はいと答えたものの、淳は美央に何をするのか気になった。彼女が喜ぶなら、自分も興奮するのかもしれない。そう思ってますます恥ずかしくなった。  そんな遥香を徹は愛しそうに抱きしめる。  遥香の柔らかい腰や臀部に手を回し、美央とどんなプレイができるのかイメージしたところで徹は勃起していることに気づいた。慌てて身体を離し、会社へ向かった。次に美央に会えるのはいつだろうか。  翌日のノートには『Thank you。楽しかったよ』とあり、遥香と二人微妙な表情で顔を見合わせた。 「遥香は、その、身体は大丈夫?手首とか」  徹の視線をたどり、手首がわずかに赤くなっていることに気づいた。 「徹さんは大丈夫?」  ベッドの上でお互いの身体を点検し、遥香のお尻に噛み跡があったのを発見した。徹が労わるように撫でさする。その手がぎこちなく、性器に伸びてくる。 「あっ、」  昨晩たっぷり弄られただろう女芯はすぐに濡れ、徹がすぐに挿れようとしてきた。その手を押しとどめ、遥香は徹のいきり立ったものを咥えた。  ―絶対、喜ぶから―  徹はうめき声をあげ、遥香の頭をおさえると、腰を使い激しく出し入れを繰り返した。唾液があふれ、床に垂れる。 「遥香、どうしたの。ああ、いいよ。すごい」  嫉妬だろうか。淳が美央と激しくからんだと思うと、やりきれなさと同時に徹の身体を蹂躙したくなる。 「美央、美央じゃないよね」  ああ、徹さんも美央と寝てるんだ。  遥香は悟った。自分が淳とセックスしているように、徹も美央としているんだ。  考えてみたらその方が自然だ。 「わたしは遥香。ねえ、徹さん、わたし達のセックスを美央達に見せてやらない?」  徹は頷き、録画を始めた。撮られている。見られると思うと、背中からゾクゾクとした歓喜が這い上がってくる。焼きもちを妬かせたい。  徹も同じなのか、今までにないほどイヤらしい顔をし、遥香を弄ぶ。乳房をわしづかみにし、激しく揉まれた。乳首はイタっと声をあげるほど強く吸われた。自分は今どんな顔をしているのだろう。スマホを見てニコリと微笑んでしまった。 「ああ、遥香がこんなに淫らになるなんて、俺、すごく嬉しい」 「徹さんも好きにしていいのよ。いっぱいエッチなことして」  言葉にだすのはまだ恥ずかしく、顔を赤くしながらいってしまう。ますますそそられたのか、徹は遥香の脚を大きく開脚させ、カメラに向かって恍惚とした表情を見せる。  淳だ。  まぎれもなく淳がそこにいた。 「徹さんよね。淳さんじゃないわよね」  徹もそこで淳と遥香がセックスしていることに思い当たったようだ。見せつけるように、性器がこすりあわされているところが映るよう、角度を変える。  自分達、どうなっちゃうんだろう。それより身体がもつのだろうか。身体はひとつなのに。 「4人でできないのが残念だな」  ことが終わって、徹がカメラに向かって最後に放った一言に、遥香はドキンとする。  淳も徹さんから生まれたものなのだ。美央が自分から生まれたように。 「次は、プレイも楽しんでみよう」  徹が遥香の頭を抱いた。もう美央と同じようなセックスができると思っているのだろうか。遥香は顔を赤くしながら頷いた。 「遥香、可愛い。美央とちがうところは、その恥じらったかんじ。ねえ、淳はどういうふうに遥香を抱くの?」 「えっ、」 「なに、そんなに恥ずかしいことさせるの?」 「ううん、徹さんが喜ぶことを教えてくれるの。積極的にいろいろやるといいとかって」 「フェラチオもそのひとつ?」  こくりと頷いた。 「淳が先なのが癪だけど、おかげで遥香にやってもらえたから、よしとするか。今度からは俺だけにしてね」  徹がじっと顔をのぞきこんでいった。唇が赤く濡れ、嫉妬に燃えた瞳にまた蜜があふれてきた。 「うん」  自分たちはどうかしている。誰が誰に嫉妬をしているのか、柱時計の振り子のように相手を変えながら規則正しく時を刻んでいく。 「遥香もだいぶいい顔になってきたねぇ。エロいよ、これ」 「美央にはまだまだ叶わないけどな」  徹は美央と先日の動画を見ていた。あとで遥香と見直した時はお互い恥ずかしかったが、美央と見ると今度は逆に興奮してくる。 「俺は遥香も好きだけど、美央も好きだ」 「あはは、男ってどうして同じこというんだろう。淳も、わたしと遥香と両方大事で好きなんだって」 「美央は?俺の方が好き?」 「遥香にも同じ質問してたよね。わたし聞いてたよ。男って負けず嫌いで笑っちゃう。女には両方好きとかいうくせに」  裸の胸をゆらしながら、美央が徹の上にのってきた。汗ばんだ肌が密着して先ほどの情事が思い出される。 「女は、『あなたが一番好き』っていうんだよ」 「そういうものなの?それって、どうなの?」 「そうだなぁ、女は共感能力が高いから、自分のことを好きな男性に見つめられたら、その時は目の前の相手が『一番好き』ってなるんじゃないの」 「女の方が流されやすいというのはそういうことか」 「そっ、その時はそう思うんだよ。べつに嘘ついてるわけじゃない」 「じゃあ、美央は俺のこと、今は淳より好きなんだね」 「大好きだよぅ」 「じゃあ、美央と遥香は、どっちが俺のこと好きだろう」  美央は考え込む。「たぶん、同じくらいなんじゃないの」  徹と淳だったら、断然淳の方が良かった。セックスこそ楽しめるようになったが、徹は面白みに欠けるところがある。  だが、と思う。  ダイレクトに心を触ってくる淳とはちがい、不器用ながら全身全霊をこめて心を包もうとする徹はクセになる。その遠慮がちな暖かさに安心感を覚えるようになったのはいつからだろう。 「徹はもっとしゃべった方がいい」 「ええ、俺、つまんない?」 「淳はよくしゃべるよう。それに慣れちゃったせいかな」 「わかった。努力してみる」  淳の名前をだすとやる気スイッチが入るから、時々からかってみたくなる。 「でも、何を話せばいいんだろう。考えてみれば、たいして話すことはないから、」 「もう、終わり?」 「美央の話が聞きたい。質問してもいいかな?」  美央は徹の乳首を指で遊びながら、どうぞ、といった。 「美央が生まれたのはいつ頃なの?」 「たぶん、中学生の時かな。でも勉強とか嫌いだから、ほとんど中でじっとしていた。わたし頭悪いし。遥香の毎日なんてたいして面白くなかったよ。漢字の勉強なんか、何回も何回も書いてるの。見ててうんざりして寝ちゃったけど」美央はそこでニタリと笑った。「うふふ、でも遥香が男子生徒の上半身の裸を見て、ドキドキしてるのは面白かった。その日は夜でていってオナニーしちゃったよ」 「そ、そうなんだ。遥香が気づいてたら、落ち込みそうなことしたんだね」徹は返答に困る。 「うん、気持ちよかった。それから遥香が‥‥遥香として初めてセックスした時さ、ああ、前の彼氏ね。こいつが下手くそで、思わず入れ替わっちゃったんだ」  初耳だ。元カレは以前いた会社の同僚と聞いている。そいつは興奮したんだろうか。自分のように。
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