僕の中のボクと君の中のキミが出逢ったら

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 ドライブを楽しみながら予約した宿につき、部屋に入ると美央がすぐ迫ってきた。タラリと唾液が伸びる濃厚なキスに徹もこたえる。勃起したペニスがチノパンの中で窮屈になっているのを察したのか、ジッパーをおろされた。生暖かい舌に包まれ、猛った欲望は手がつけられなくなった。美央を抱き起し、スカートの中に手を入れ、乱暴に下着をおろした。 「せっかく新品なんだから、ちゃんと見て」 「じゃあ、美央、ワンピースを俺が感じるように脱いでくれよ」 「ファスナーはおろしてね」  クルリと背を向いた美央の首筋を舐めながらファスナーをおろす。色白の美央がまとった下着はレースをふんだんに使ったブラック。パンティもおそろいの柄でヒモパンだった。こういう下着が普通に売っていることに驚いた。自分は世の中のことに疎いらしい。 「こっち向いて」  健康的なお色気を振りまいた美央が笑っている。下着の上から犯したくなる。慣れてきたが、自分の沸き上がる衝動にも呆れる。 「ああ、徹。早く脱がせて」  背中に手を回し、ブラのホックをはずす。ヒモパンは引っ張るとあっけなく落ちた。  徹はかぶりつくように襲い掛かり、美央をこれでもかと喘がせた。挿入をしただけで美央は激しくイキ、徹は嬉しくなった。今夜は抱きつぶすつもりだ。 「ああ、もっと、もっとちょうだい」  底なし沼に囚われたような徹の欲望は、果てることがなかった。  朝になると布団の中で遥香は目が覚めた。目の前には徹か、淳か。まだ眠りについている。はだけた浴衣からのぞくのは素肌。自分も下着をつけていなかった。壁には見慣れぬワンピース。覚えがないから、美央が買ったのだろう。けして自分では選ばないデザインと色。  立ち上がって身体にあててると淳が起きだしてきた。 「遥香ちゃん、おはよう。あれ、ステキなワンピース。似合いそうだね。っと、まだ着ちゃだめだよ。そのきれいなおっぱいよく見せて」  そばに寄ってきた遥香の浴衣を肩からはずす。露わになった乳房を吸い、空いた手で性器をなぞる。 「ああ、すごく挿れたい。でも、俺、満足させてあげられるかな」 「疲れてる?」 「栄養ドリンク買わないとダメかも」  淳がやれやれと頭を振った。「最近、あいつら激しいね。俺も頑張らないと、遥香ちゃんに嫌われちゃうかな」 「淳さん」  遥香は起き上がった淳にしなだれかかった。「無理しなくていいわよ」  自分でも驚くくらい甘い声がでた。 「ああ、遥香ちゃん。可愛すぎ。そんなふうにされたら、ほら、こうなったよ」  淳は自分のペニスを握らせ、唇を重ねると舌を思いきり吸った。 「疲れているなら、わたしが動くわ」  遥香が腰を静かにおろしてくる。可憐に微笑みながら大胆なポーズで淳を高みへと昇らせていく。たまらなくなり、胸を強く揉みしだいた。遥香の息遣いがさらに切なげになり、淳は弾かれるように渾身の力を振り絞り、精を解き放った。  横たわる遥香の髪を撫でつけていると、キスをせがまれた。満足するまでたっぷり応えると、安心したように目をつむった。  童女のように愛らしく、自分のちょっとした一言にふくれたり顔を赤らめたりする。表情がくるくる変わり、目が離せなくなる。昨日のデートは徹と美央に譲ったが、今日は貸し切りである。  全幅の信頼を預けてくる無垢な姿には心惹かれるものがある。なぜ美央が現れてしまったのだろう。抑圧していたものが美央の人格を借りて現れたというなら、自分がすべて開放してやりたい。徹には無理だろう。あいつにはまだまだ寛容さが足りない。  徹は成人した立派な男性だ。性欲はあるが、それを発散することをほとんどしなかった。彼女がいない時は自分で処理をし、終わると決まって嫌悪感でいっぱいになっていた。女性とつきあっても、まるでセックスは必要悪といわんばかりの淡泊なセックスで、相手にもそんな態度を崩さなかった。  業を煮やして徹が寝ている時に、外にでて女を抱いた。貪欲に求めた分、経験も淫楽もスキルがあがっていった。  その快感は身体が覚えているはず。快楽と罪悪感のはざまでうろたえる徹は面白かった。ふざけてその筋のハウツー本を机に置いたり、エロ動画を立ち上げてみたり。その時の徹の顔。無意識レベルで女を求めていると知り、少しは改善されたようだ。  淳は時々息抜きに盛り場を出歩き、その夜の相手を求めた。徹の気になる女性が別人のようにベンチに座っていた時は心底驚いた。  こいつは俺の(つがい)だ、と本能で理解した。  美央もそう思ったらしい。性的に開放された交代人格同士、これ以上のペアはない。お互い怠惰で淫蕩で、主人格とは対極にいる存在。 「わたし、バカだから」  美央は何かあるとそういっていた。遥香はくらいついて勉学にいそしんでいたようだが、心の底では全部うっちゃりたかったのかもしれない。人の顔色ばかり伺い、嫌われまいかとビクビクしている。気分屋の母親と失踪した父親。息をひそめてひっそりと生きてきた人生だ。  美央はあけすけで言いたいことをはっきり言う。腹を抱えて大笑いする姿はこちらまで気分が明るくなる。  だが、遥香が自分を殺して殺して、抑圧した結果出現させた美央でしか自分を表現できなかったのかと思うと、不憫でならない。女として少しずつ開花していく遥香を守ってやりたい。痛切にそう思う。 「遥香、俺のこと好き?」 「うん、大好き」 「俺も好き。愛している」  愛を伝えるだけで頬を染める。 「どこが好きなの?いってごらん?セックスかな」 「いや、いじわる言わないで」 「ほら、ちゃんと教えてくれよ。それともセックスが足りない?あっ、いじわるして欲しいのかな」 「もう、いじわる!全部よ。わたしが何をいっても全部受け止めてくれるところ。わたし自分のことを話すのが怖かったの。でも淳さんは何を話しても『頑張ってきたね』っていってくれるでしょ。わたし、ずっと誰かにそう言ってもらいたかったのかも」 「徹には言えない?」 「うんと、」遥香は考えるようにうつむいた。「徹さんは優しい。いつも気にかけてくれるし。でも、遠慮しちゃうの。人の心に触るのって難しい。どこまで踏み込んでいいのか、踏み込まれたいのか。きっと、淳さんは気持ちよくわたしの心を触ってくれるからなのかな」 「身体だけじゃないってところ?」 「もう、すぐエッチなことばかり」 「嫌いじゃないだろう。ほら、また濡れてきたよ。感じやすいな。俺のこと愛してるっていえよ」 「うん、愛してる」  顔を伏せ、言葉を絞り出す。こんな仕草にもドキドキしてしまう。めちゃくちゃにしてやりたくなる。  自分は変わったのだろうか。徹も美央も大事な人間だ。だが、遥香が一番愛おしい。  自分はどうかしている。美央と享楽にふけり、この世にとどまることだけを考えていればいいのに。  平日は静かな徹と遥香の日常が続いた。平日に徹と遥香、金曜日は美央と淳。週末は徹と美央、淳と遥香の組み合わせで交わった。回数が多いような気もするが、それぞれの組み合わせでは週に1回。抱かずにはいられない。徹として抱くのは2回だ。  どちらとセックスするのが楽しいか。遥香に聞いてみたい気もするが、本当のことはいわないだろう。逆に質問されたらどう答えればいいのだ。  最近の遥香はセックスに比例するように、少しずつだが自分のことを話すようになってきている。時には冗談をいい、よく笑ったりするようになった。会社も復帰し、毎日通っている。今のところ精神も安定しているようだ。  初めは絶望的だった美央と淳の存在が、自分たちにいい結果をもたらしている。このままずっと4人で肉体と時間を共有するのも悪くない。  一度、遥香と話し合ってみるか。
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