プロローグ

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プロローグ

 崩れる砦。  粉塵、くすぶる炎、瓦礫に血の匂い。 「ああ、嫌だ。空気のきれいなところでゆっくり愛を語りたいと思って遥々やって来たってのに。これじゃ望んでいる場所と真逆じゃないか」  愚痴りながらも崩れ落ちた砦の瓦礫を魔法で払い、倒れた兵士の頭から兜を外して手をかざす。  いったい何人の兵士に治癒魔法を施しただろう。魔獣の群れに襲われ陥落した砦。こんなところに、探している人はいるはずもないのに。  魔法を詠唱すると手が淡い光に包まれた。その光が傷ついた兵士の頭の傷をみるみるうちに塞いてゆく。 「うっ……」  意識を取り戻した兵士の青年が目を開け、驚いた顔をしたのは、目の前にいたのが少年だからか。 「あなたはいったい……だれ……いや、どなたですか」  逆光でシルエットしか見えない。が、少年の口の端がわずかに上がったように見えた。 「僕が誰かって?」  よくぞ聞いてくれた、とばかりに。  さっきまでの愚痴を吐いていたトーンとは違い、声色が明るくなる。 「僕は大魔法使いハーロッズのひ孫、リア・ジュフレール様だ。今後歴史に残る偉大な魔法使いの名だ。よーく覚えておくように。そしてこの地に現れた英雄として、子々孫々伝えていくように」
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