Prologue

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*  雨で湿った終業後、僕の部屋。  電気の付いていない部屋でアロマキャンドルの火だけが揺らめいている。 「で、先輩。今日のアレはなんだったんですか」 「......。」  同じベッドに腰掛けて居るのは清水主任だ。  僕と清水主任は学生時代からの知り合いで、先輩後輩の間柄だった。  今はーー違う。 「謝ってください」 「言い過ぎた。悪い」 「違います。んですから。僕と先輩が恋人だったらどういう風に謝るのか教えてください」  先輩は少し困惑したような顔で左右を見渡すと、僕を不器用に抱きしめる。 「ごめん、晴」  僕はそんな先輩を抱きしめ返す。  叩きつけるような雨の音の中、僕達がしたことはそれだけだった。 「忘れないでください。先輩は僕のお金と引き換えにした恋人なんですから」  僕達は仄暗い関係をかれこれ1ヶ月続けている。僕達の間に愛はなく、また、この先芽生える予定もない。  暫くすると雨が上がった。 「じゃあ、帰る」  先輩が持って来た傘を帰るときはいつも畳まれている。これは、そういう契約だからだ。  そう、僕にとって先輩はなのである。
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