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「あー、やっぱり清水主任良いよなぁ」 「あの胸、シャツ緩いとき谷間ヤバいって」 「いや、あの引き締まったお腹からの腰つきだろ。エッロ」  会社。昼休み。喫煙室の近くを通ると同僚達が何やら下衆な話をしていた。ちなみに僕は喫煙はしない。煙草は健康を害するし、金がかかるからだ。 (馬鹿共め)  清水 莉雨ーー僕の大学の先輩。僕の弊社への推薦枠は彼女の功績によって新設された。卒業生講演、OB訪問と指5本で足りるステップで僕が就活を終えられたのは、ひとえに彼女の優秀さと信頼故である。彼女は有名バンドやお笑い芸人の企画を次々に企画•運営し、引っ張りだこのビジネスマンである。  しかし、僕以外の人間にとっては、彼女のトレードマークはそのセクシャルな色香にあるようだった。 (何もわかってないな)  誰とでも分け隔てなく接する先輩の魅力は計り知れない。僕は基本的に女性が嫌いだが、彼女だけは特別だ。 (人生で一度付き合うなら彼女のような女性が良いとは思う)  容姿端麗、努力家で人望の厚い女性。  そんな彼女と、とある事件で接点が芽生えたのは運命の悪戯という他ないだろう。
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