スマホ女

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「ぎゃああああっ! なんで!? ほんとに目!?」 「そう」  スマホから流れたその声を聞いて、ようやく分かった。  私は勘違いをしていた。  電源はとっくに入っていた。  スマホ男も。  独り言だけ言っていればよかったのに、私は質問を――会話をしてしまった。  気がつくと、私は真っ暗闇の中にいた。  見上げると、上のほうに四角い小さな窓があり、その向こうに私の部屋の天井が見える。  スマホの画面なのだろう。  それ以外は、私の周りの全てが真っ黒。  スマホ男はどこに行ったのだろう。  私を取り巻く闇の中には、姿も見えないし気配もない。  目だけであんなに大きいのなら、体はどれほどのものなんだろう。  考えると、体が震えた。  あの窓に手が届けば出られそうだけど、どうしたらいいのか。  そんなことを考えていたら、スマホを操作しないまま時間がたったせいか、頭上の窓がふっと消えた。  私のいる世界は、完全な暗闇になった。  自分手のひらさえ見えない、完全な黒。  叫びそうになった。  でも、喉が引きつって、声が出ない。  息が苦しい。  重さも感触もないはずの闇が、圧力を伴って私を包み込んでいるようだった。  空虚さと静寂に押しつぶされて、自分がなくなってしまいそうになる。  自分の手足がまだ存在しているのかどうかさえ、確信が持てない。 「ああ……うあ……」  肺から押し出されたうめきが、私の口から漏れた。  その時、後ろで気配がした。  振り返る。  でも、真っ暗。なにも見えない。  そこに、たぶん、スマホ男がいる。  体はどんな形をしていて、目はどんな大きさで、その顔はどんな表情を浮かべているのか。  見たくないけど見ずにはいられない。  でも見えない。  なにも分からない。  ここには私が分かるものがなにもない。 「あああああ……あ……ああ……あああああ」  どうしていいか分からないまま、私は泣きながら、ただ半開きの口からそんな声を漏らし続けた。  ああ、ああ……ああああああああ、……あああ……  ああああ……あ……ああ……  あ…… 終
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