4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ぎゃああああっ! なんで!? ほんとに目!?」
「そう」
スマホから流れたその声を聞いて、ようやく分かった。
私は勘違いをしていた。
電源はとっくに入っていた。
スマホ男もすぐ目の前にずっといた。
独り言だけ言っていればよかったのに、私は質問を――会話をしてしまった。
気がつくと、私は真っ暗闇の中にいた。
見上げると、上のほうに四角い小さな窓があり、その向こうに私の部屋の天井が見える。
スマホの画面なのだろう。
それ以外は、私の周りの全てが真っ黒。
スマホ男はどこに行ったのだろう。
私を取り巻く闇の中には、姿も見えないし気配もない。
目だけであんなに大きいのなら、体はどれほどのものなんだろう。
考えると、体が震えた。
あの窓に手が届けば出られそうだけど、どうしたらいいのか。
そんなことを考えていたら、スマホを操作しないまま時間がたったせいか、頭上の窓がふっと消えた。
私のいる世界は、完全な暗闇になった。
自分手のひらさえ見えない、完全な黒。
叫びそうになった。
でも、喉が引きつって、声が出ない。
息が苦しい。
重さも感触もないはずの闇が、圧力を伴って私を包み込んでいるようだった。
空虚さと静寂に押しつぶされて、自分がなくなってしまいそうになる。
自分の手足がまだ存在しているのかどうかさえ、確信が持てない。
「ああ……うあ……」
肺から押し出されたうめきが、私の口から漏れた。
その時、後ろで気配がした。
振り返る。
でも、真っ暗。なにも見えない。
そこに、たぶん、スマホ男がいる。
体はどんな形をしていて、目はどんな大きさで、その顔はどんな表情を浮かべているのか。
見たくないけど見ずにはいられない。
でも見えない。
なにも分からない。
ここには私が分かるものがなにもない。
「あああああ……あ……ああ……あああああ」
どうしていいか分からないまま、私は泣きながら、ただ半開きの口からそんな声を漏らし続けた。
ああ、ああ……ああああああああ、……あああ……
ああああ……あ……ああ……
あ……
終
最初のコメントを投稿しよう!