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玲はこの先、燈也の手には収まらないくらいの存在になるだろう。周りも玲を放っておかないはずだ。高難易度クエスト並の妙な緊張感が体を巡る。とても心地が良い。
燈也は玲の腰に腕を回して、連れ歩く。玲はギョッとして離れようとするが、離すわけがない。
「おい!近い!近いって!」
「うっせ!アピールしてんだから近くていいんだよ」
「嫌がらせのプロかよ……」
完全に嫌がらせだと思っている玲。しかし、それでもいいと燈也は思う。時間をかけてでも落とすと決めたのだから。そしていつか同じ想いを持てばそれでいいとーー……。
そんな二人の影を街灯が淡く照らしていた。
「なぁ、これいつまでしてるんだ?」
痺れを切らした玲は、まだ腰に腕を回したままの燈也に問いかける。燈也はニヤリと口元に笑みを浮かべるだけで真面目に取り合わない。
「そんな腰支えてなくても歩けるんだから。離してよ」
「嫌だね。今重要任務中だ」
「なんだよそれ」
怪訝そうな玲に燈也は目を細めて、笑う。そして、揶揄うようにこう言った。
「俺色に染めてんだよ。くっついてな」
「くっつくだけで染まるか?」
「お望みとあらば、ここをくっつけてもいいんだぜ?」
言いながら燈也は玲の唇をゆっくりなぞる。燈也の言葉と行動にポカンとした玲は、数秒遅れて顔を真っ赤にさせた。
「っ!なっ、なに言って!」
鈍くても今の燈也の行動はわかりやすかったからか、玲は意味を理解した。だからこその動揺。そして逃げようとするのを燈也は逃がすまいと強く引き寄せた。
「離せっ!」
「いやだね」
暴れる玲。いつでも燈也に従わない、反発するその行動。燈也は自分とは正反対の彼女の存在に楽しそうに笑う。
ーーもう抜け出せない。玲のこの心も体も黒く塗り潰して、俺色に染める。
ーー誰も入り込めないように。
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