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玲はさすがに怖かったのか、少し緊張していた。それでも強気な態度は健在なのだからたいしたものである。そんな玲に燈也は淡々と返した。
「……別に助けたつもりはねぇ。あいつらがムカついたからぶっ飛ばしただけだ」
「そ、それでも……ありがとう……」
玲は燈也に掴まれている手首を少し見つめて、それから小さな声でお礼を言う。
「お前って……ほんとバカだな」
そんな玲の態度に燈也は呆れたようにため息を吐いた。
「……なんだよそれ!」
「だってそうだろ?俺はただの暇つぶしの玩具を取り返しただけ。そもそもおまえがあんなのに捕まらなきゃ、こんな無駄な時間過ごさずに済んだ」
玲は悔しさから歯を食いしばり、燈也を睨みつける。それは実験している時と同じ、隙をついて噛み付こうとするような態度。
「なんなんだよ、おまえっ……腹立つんだよ!私のこと、モルモットだの玩具だの好き放題言いやがって!私はっ……私はっ……」
「なんだよ」
「私はおまえのモノじゃない!」
玲はそう叫んで燈也の手を振り払った。そしてそのまま走ってどこかへ行ってしまったのだった。
ーー俺のモノじゃない? そんなのおまえが決めることじゃないし、だからなんだっていうんだ。
燈也は玲の走っていった方向を見る。あんなモルモット一匹なんとも思わない、そのはずなのに。だけどどうしてか、イライラは収まらないし、振り払われた手が痛かった。
***
そんな気持ちが起きても燈也の日常は変わらない。あれ以来、玲は避けているのか捕まらないし、代わりに不良を殴っても心は晴れない。つまらないという言葉が脳を埋め尽くす。
やけに重い足取りで歩いている時だった。燈也の耳に微かに声が入る。「いやだ」と叫ぶ声。聞き覚えるのある声色。気づけば燈也はその声がする方へと歩みを進めていた。
着いたのは人気の少ない路地裏だった。
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