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その言葉に玲は怒ったのか、いつものように睨みつけてくるのだった。その表情にホッとする自分に気づいて、燈也は自分の感情を誤魔化すように告げた。
「これに懲りたら、おとなしくしてろよモルモットちゃん」
「命令するな。私が何するかは私が決める」
玲は強気な態度で笑うと、燈也の横をすり抜けて歩いていく。その後ろ姿から燈也は目が離せなかった。玲のあんな笑った顔なんて初めて見たから……。もっと、みてみたいと燈也は思ったのだった。
***
それから燈也は玲に対しての人体実験はやめて、いろいろ他のことをすることにした。ただ話したり、玲に何かを渡したりして反応をみる。
最初は警戒していた玲だったが、次第に呆れながらも付き合っていた。玲が笑ってくれると燈也の心は満たされていく。
玲に笑顔を向けられると、なんだか変な気分になるのだ。それは不快ではなくて、むしろ心地良いと思う自分に戸惑った。
そこでようやく燈也は自分が玲のことを想っているのだと気づいたのだった。
「こんなモルモットに絆されるとはな……」
「ん?なんか言ったか?」
「なにも?」
燈也はニヤリと笑って玲の隣を歩く。今まで誰とも並んで歩くなどしたことがない燈也。初めての経験に、心が震える。
そのうち、それが当たり前になり、自分にとって玲との時間はなくてはならないものとなった。
だから、攫われたら迎えにいくし、捕まったなら助け出す。
ーーこれは俺のだから。
「なあ、玲。おまえも満更でもないんだろ?俺といること」
燈也が自信満々に尋ねる。玲は眉根を寄せて顔を顰めた。
「何言ってんだ?そんなことあるわけないだろ」
「いいや、あるな。おまえは俺を離せない。その証拠に、ずっとそばにいるもんな?」
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