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「知ってたか?生き物ってのは本能的に闇を恐れるんだと。この黒は恐怖の対象なんだろうな。まるで、俺みたいだ」
黒の王様と言われ続けた燈也の心の奥底の本音。それは普段の彼からは想像できないほど、弱々しいものだった。
玲は燈也の顔を見ようと隣を向く。けれど、彼は決して玲と目を合わせようとはしなかった。
「確かに、この黒に吸い込まれそうだな。底なしの闇に」
玲の口から出た言葉に燈也はぴくりと反応する。自分で言うのより他人に言われる方が、やはり心に響く。仕方ないと思えていたことが、玲に言われるとショックなくらいに心を抉られた。ああ、やっぱり……と玲には何かを期待していたからか、燈也は乾いた笑いを漏らした。
「でも寝る時は暗くするし、案外落ち着く色だよな。黒って」
だから、次の玲の言葉に燈也は間抜けにも口をぽかんと開けてしまった。
「は?」
「黒、嫌いじゃないよ」
玲の言葉に燈也は目を瞬く。そしてその意味を理解して大きく息を吐いた。なんだそれ……と、まるで毒気を抜かれたように安堵する。
ーーもう手放せないな。誰にも渡したくない。絶対に自分のものにする。
そんなことを考えていることを玲は知らないまま、いきなり黙る燈也に声をかけるが無視されてしまうのだった。
「おい!」
「……」
「ちょっと!ほんとになんなんだよっ……!」
反応のない燈也に玲は声を荒げるが意味はない。玲はわけがわからないと眉根を寄せて、一体なんなんだと考えるとハッと気づく。そして、大発見でもしたかのようにご機嫌な笑みを浮かべた。
「私の髪も黒。目も黒。これはつまり、“おまえ色”ってやつだな」
そんな風に言う玲に燈也は驚き玲に目を向けた。ようやく反応が返ってきたことに玲は自分の発言が凄すぎたからだと得意気になる。
「おまえ……意味わかって言ってんのか?」
「ん、意味?」
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