黒に染める光

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 半分呆れながら言う燈也に玲は不思議そうに首を傾げる。玲としては、ただ言葉通り、お揃いだなという程度の意味なのだろう。しかし燈也にとっては違う。 「黒は……俺だ。俺の色」 「だから?」 「……っ、おまえなぁ!」  玲は燈也の言葉の意味を全く理解していないようだ。そんな玲に燈也は頭を抱える。この鈍感な女を落とすのがどれだけ大変か……。でも、それでもいいとさえ思う自分は重症なのだろう。  ーーああ、もう手放せないな。絶対に自分のものにする。  そう改めて決意したのだった。  燈也が決意する隣で、玲は相変わらずの態度でいる。自分の発言がどれだけ燈也に影響を与えているのか、玲は気がつかない。 「なあ、さっきから急に黙ったりするけど、どうした?具合悪いのか?」 「おまえのせいだよ」 「は?なんで私?何にもしてないけど」 「してんだよ、思いっきり……はぁっ」  大きなため息を吐く燈也に玲は納得がいかない様子でいた。 「なあ、言いたいことがあるなら言えよ。気持ち悪いだろ」 「自分で考えろばーか」 「ばか?ばかって言ったのか?会話をする気のないおまえにだけは言われたくないな」  ここまで燈也を心配していた玲が不機嫌そうにそう言うと、燈也は何故か笑ってしまった。  自分が他人とこんなに砕けて会話ができることに。こんな無意味なやり取りができる幸せに。燈也はひとしきり笑うと玲を見る。  男っぽいのに、抜けていて、目が離せない玲。するっと人の内側に入り込んで浸潤していく。本人に自覚があるのかは不明だが、天性の人たらしなのだろう。そりゃあ不良にも簡単に目をつけられるはなと燈也は自身の考察に頷く。
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