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黒に染める光
ーー黒の王様。
どこの誰がつけたのか、その肩書きを背負っている彼。
見たものをなんでも吸収し、力にする、ブラックホールのような生き様。
齢16歳の暗い紅色の髪が目立つ、目つきもすこぶる悪い燈也という名前の少年だ。
燈也は、なんでもそつなくこなし、欲しいものは何でも手に入れてきた。そんな彼の傍若無人な態度に人は寄りつかない。
燈也の周りはいつも誰もいなかった。それを悲しんだこと、憂うこともしない。
でもそんな日常が嫌いかと聞かれたら別に嫌いではないと答えるだろう。
燈也の目に映る世界はモノクロでつまらないけれど、それはもう変えようのない現実だから。
燈也がいつも見ている景色はいつだって変わらないし、それがつまらないものだと彼は十分知っているからだ。
むしろ面倒な邪魔な奴らがいなくて助かるくらいに思っていた。
そんな中で、燈也は玲という少女に出会う。
一つ年上の彼女は力もないのに生意気で、いちいち歯向かってくるその態度が燈也は気に食わなかった。
他の奴らとは異なり、心がざわつく。
どんな風にしたら壊れるのか。
どんな風にしたら啼くのか。
どんな風にしたら惨めな姿をさらすのか。
人体実験と称して体をイジれば、痛いはずなのに、やめてとは懇願しない玲。いつでも睨みつけてくるその眼差しは折れることを知らないのか痛いくらい真っ直ぐで、燈也は笑いが込み上げる。
ーー可愛い俺のモルモット。研究動物。
「っ……おまえ、いい加減にしろよっ!」
「うっせ、モルモットは黙ってイジられてろ。それとも……ご主人様ぁって泣いて懇願でもするかぁ?できねぇよなぁ、俺に負けたくねぇもんな?」
威勢だけはいい玲に燈也はニンマリと笑って挑発した。その言葉に玲の目は益々鋭くなる。比例して燈也の笑みは深くなった。
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