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ゲネプロという名の悪夢
朝になって、
「先生。おはよ」
上目づかいで俺を見るなよイゾルテ。
「今日は、ゲネプロやるんだって」
ゲネプロって、通し稽古だっけ?
まあ、3日後本番だしなあ。
今日、魔王とおばちゃんのシチュー屋見に行こうと思ったのに。
ホールに入って、最初の飛び込んできたのは、
「――アリエール?か?」
まあ可憐ぽい、お姫様がいた。
「ですが、何か?」
「ああうん。中々衣装キマってるじゃねえか。普通にお姫様みたいだぞ?こないだ毟られてたみたいな服で」
うん。まあ、古傷弄って済まん。とは思う。
「ぎ、ぎ、ぎ、ぎゃあああああああああああああああああああああす!」
ギギギっつって逃げていった。
「ハアハア。アリエール可愛い♡もうチューしたい♡デレて逃げてった」
「そしてお前だ!その衣装何?!どこに俺っぽさがあるんだ?!」
俺の衣装に着替えたイゾルテがいた。
「あ?旅の途中で湖畔の小国に来た俺だろ?おかしな点?何もねえだろう」
ああくそムカつく。変に俺っぽくなりやがって。
それで、別の演者に俺は気付いた。っていうか、
「このショタっ子は誰だあああああああああ?!」
「え?ああ、3期生の、エリーゼ・ホーンテッド先輩。ユーリル王子役の」
「貴方があの、ジョナサン・エルネスト?どんなキノコが、好き?」
うるせえ!キノコは忘れろ!
「エリーゼ先輩は、演劇サークルの星で、今は役に深く入り込んでいる。もう彼女しかショタになれる子はいない。普段は、トウモロコシを凄くエロく齧る。堪んなくなってキスしたら、逆に舌をねじ込んできたこともある」
「こいつ!これで最終学年だと?!論文の出来次第じゃそろそろ卒業認定だぞ?!」
「卒業できるかどうかより、先生のキノコがどんなのか、気になってる。そして、安心して欲しい。今年は留年がもう決定したから」
ていうか頑張れお前!論文だったらまだまだいける!
思わず、教員モードになってしまった。
「このショタモンスターが、アリエールの双子の兄妹?!大丈夫なのか?!あいつ」
「アリエールは、最高の妹になれるのに。悲鳴上げて逃げちゃった。シュン」
「まあ要するに、この舞台上はまさに戦場。誰もが、アリエールのニャンニャンちゃんを強く狙っている。女生徒演劇グループと、ユリは切っても切れないし。古の社交クラブの暗躍も、噂されている。先生、アリエール食わないでね?本気で殺されるかも」
食う気ねえし殺される気もねえよ。
ゲネプロかあ、今更、あいつのクソ本読む気ないけどなあ。まあ話の筋は解ったよ。
湖畔の小国に住む、ユーリル王子ユーリラ王女の双子の兄弟と、王の座を狙う大臣と俺。まあそういう話らしいな?
あああ。キノコ褒め合うシークエンス始まった。
まあ、ただのキノコなんだけどね?俺のワンちゃんじゃなくてだな。
ジョナサン。貴方が召喚したこのキノコ、傘が広くて、柄が大きいですとか馬鹿なのか?本気で。
本気か?このどこまでも湾性に発達したヒダに関して、よくもここまで台詞がもつな!
ああ。ヒダの天辺から迸るジョナサンのアレ、頬張ってもよろしいですか?とかどんな脳みそしてんだ?!アリエールボケええええええええええええええええ!!
舞台を見るのも嫌になって、視線を逸らしたところに、ブレイジア・イグニスがいたのが解った。
何、ハアハアしてんの?
お前あれか?腐っちゃってるのか?
頬を朱に染めて悶えている巫女を、死んだ魚みたいな目で見つめていた。
今日は、上手く出来たのかな?ハートオブサンライズ。
ゲネプロが終わって、いつもの走り込みをしながら、イゾルテは考えていた。
先生に言われた、授業終わったあとの走り込み、これ、正気?
城の城壁の上一週な?昔フラさんが毎日やってた奴。
大雑把に言って、多分20キロルはあるよ?これ。
ルバリエ先生が毎日。それで、あのむっちりボディを?
あああ。ルバリエ先生の裸体が。まだ見たことないけど。
基本的に、アカデミーの生徒は、全員が。
アリエールもマリルカもエメルダも、ユノですら、私には裸に見えているもの。
ユリっ娘以前に、こいつはただの変態少女でしかなかった。
え?
目の前に、フードを目深に被った、法衣を着た誰かが立っていた。
聖都の、視察の人?
立ち止まると、フードの奥の、目が光っていた。
「貴女――は?え?」
フードから見えた顔は、明らかにイゾルテと同類。なのに、彼女の内面は、ノーマル?
これはおかしい。こんな生き物は、多分有り得ない。
「ふふふ。エラル情動操作!」
――え?
訳の解らない光を浴びていた。
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