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女神捕獲大作戦
どうしよう。俺は魔王に言った。
「神への憎しみが、凄い。現れたら、ホーラーワームぶち込んでやる」
酷い、夢テロをくらっているようだな。こいつは。
「もう本番前だってのに、えらい疲れたぞ」
「具体的に何をされたのか、解れば何の神かも解るのだがな?」
「馬鹿を撃った覚えしかない。あと食パン?って何だ」
「朝食のあるあるなアイテムだ。齧りながらボーイミーツガール的に朝ぶつかったりする」
「まあ、そうなったら――撃つだろうなあ。俺」
ところで、こいつはこいつで撃ちすぎではないか?
「最近、凄い忙しいんだ。授業と出店の監督と自主トレやって、寝られるのは夜くらいで、それであんなんされたら、もう撃ちまくるしかないだろうが」
「恐らく夢を奪われる現象は、向こうの世界では奪精の証だ。奪精鬼と言えば、まあ摩多羅神辺りであろう。西洋ではリリスやリリムなどだが」
「そんな神に、何かされる覚えはないんだが」
「リリスは、まあ神というよりサキュバスの類だ。女絡みと言えば貴様だろうとは思うが、感覚的に言うと、もっと馬鹿だ。馬鹿な神といえば――どれであろうな?」
「マジであれだ、枕元に何か書いといてくれよ。犯行声明文。だっけ?」
「時に貴様、それは、本当に女だったのか?」
「まあ、うん。ウンコの匂いがしたし。すぐヒギャアアアアアアアアアアア!って言うし」
それ、本人に直接言ってはいまいな?それは恨まれるぞ?
「そうか。ならば、女神捕獲作戦だ。ババア!ちょっと出てくるぞ?!鉄板の位置に気を付けよ?!私の焼きそばを作るスペースがないではないか!それと、紙製の使い捨て用のシチュー皿だ!サマエラ!500人分置いておけ!」
へえ、結構集客見込んでるんだな。
あ、それと魔王の焼きそば?食いたい。
のこのこと、勇者は魔王のあとをついていった。
女神捕獲。容易ではないとは思うのだがな?
魔王は、こんなことを言った。
「ただ、見た夢の内容を、殆ど覚えていないという貴様が、馬鹿であると印象付けている以上、これならいけるかも知れぬ。女神発見くん1号だ」
「裏山のメタセコイヤの木に、砂で作った階段。なあ」
「これはまあ、私の幼児体験という奴だ。木の下部に、このような階段を作っておくと、何かの足跡が付くというものだ。妖精――であったかな?」
「で?この階段の上にあるこれは何だ?」
「ん?女神であろう?女の子用グリコを置いてある」
「それで!この木に貼ってるのは何だ?!」
俺は、凄い馬鹿馬鹿しい気持ちになっていた。
「招神の護符だ」
「あああ。招神って、書いてあるな?護符って?」
「こちらの世界には、ないのだったな。識字率が極めて高いこの世界には、まああるまい。紙で出来た札に、このような文字や図形を描くと、何らかの意味を持つものだ」
それで、魔王は遠い目をしていた。
「あれはいつだったか。に――クソ忌々しいおっぱい魔神がな?護符をポケットに入れたまま洗ってしまった。ということがよくあったのだ。ト――家政婦に任せきりだったからな。洗濯関係は」
出てて来たよ。に――とかト――とかが。
「まあ、その時に見たのがこんなのであった。まあ、効くかどうかは解らぬ。寝る前に、まあ護摩でも焚いておこうと思う。神がもし来たとして、これを見れば相手にもすまい。だが、もし女神が真の馬鹿であるならば、女の子用グリコを取ろうとして、階段に足を付けるであろう。そうなれば、キョンとかを捕まえる、このロープ罠が砂を突き破り、奴を逆さに吊るすであろう」
こんな罠に引っかかる、馬鹿って一体。
「私のいた世界で、護摩を焚く人間は無数にいたが、こっちの世界で護摩焚きなどしている者はおらん。必ず食いついてくる」
魔王のこの自信も一体。
「でも、いいのか?明日から本番だぞ?」
ふん。魔王は鼻白んだ。
「貴様如きがしていたことだ。別に私にとっては、2徹3徹など容易い。元引きこもりを、舐めるな」
優しいし頼りになるう。魔王。
「ただ、何もなければそれでよいではないか。神も、貴様も、誰も傷つかんで済もう」
もう、こんないい奴を討伐しちゃった俺の先祖って。
イーサンがもし出てきたら、やっぱり撃とう。
俺は、そんなことを考えていた。
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