幕の間

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幕の間

 舞台袖に行ってみると、ちょうど、無差別に舞台を破壊した豆鬼達がいた。 「あ、先生頑張りました。ぎゅー」  何だろう、最近こいつ、よく俺に抱きつくようになっていた。 「あー。まあ、よく頑張ったぞ?ユノ」  俺は、ちっこい赤鬼の背中をポンポンしてやった。  春を思わせる、暖かな牧草のような匂いがした。 「ルルコットも、ちっこくて可愛かったぞ?」 「エヘヘ。テレますね。でも、拍手は嬉しかったですね」 「ま、俺の演技に客は釘付けだったな。これで、優勝はもう決まったようなもんだぜ。賞金でリンゴ買いまくるぜ」  うん。スライム利用した舞台早変わりはまあ凄かったが。 「そうかい。でもまあ、新解釈な泣いた赤鬼は、まあ、興味深かったな。で、頭にスリッパの下り、何で知ってんだ?」 「ああ、サクヤだサクヤ。よく打坐(だざ)ってのをしてたな。おさびし村で」  ホントに、何者なんだサクヤって婆ちゃんは。 「それで、これからどうしますか?ぎゅーってしたまま移動しますか?」 「うーん。フラさんのくまさん劇団は、お昼間だしな。降りろユノ」 「え?マリルカとメイドさんのエッチな踊り、見ないんですか?」 「あー。何か、スケジュール表にあったなあ。アホと馬鹿のストリップ小屋、だっけ?」 「ええ。先生を待っているそうですよ?メイドさんは、まな板がどうとか」 「ああうん。行かない」  おっぱい見えた瞬間、手が回るしあいつ等。  俺は、全く、これっぽっちも興味がなかった。  その頃、ストリップ小屋の楽屋では、何かアホと馬鹿が揉めていた。 「殿下、お早く身支度なさいませ。すっぴんで、舞台に上がるおつもりですか?」  ソファーに寝っ転がっていた、アホは屋台の焼き肉串を齧って言った。 「やる気が出ないわね。エメルダが先に逮捕されたでしょ?どうせ、私達も捕まるじゃんか。リーゼロッテ、捕まるの承知で踊って脱いでこい」  怒りで、わなわな震えた馬鹿は言った。 「既に、女生徒のヌードを(かぶ)り付きで見たいお父さんで、舞台は満員御礼です」 「遅延発動の呪殺地雷設置しといて。ムショに会いに行くから」  この、アホをどうしてくれよう。  王族に対してそんな風に思っていると、別の人物が平然と楽屋に入ってきて、鏡台の前でパフパフメイクを始めていた。 「あれ?何で?」 「ジョナサンは、貴女達に全く興味がないそうよ?脱いだら逮捕するって考えているけどね?」  現れた校長、ルルド・リュミエールは、衣装のバストラインを整えながら言った。 「男を誘うのはいいけど、媚びてはいけないわ。真にいい女は、そこにいるだけで男を呼び込むものよ。まあ、見ていなさいな。むせ返るようなカオスとタナトスの狭間。そこに真のエロスがあるのよ。ポールはさっき立てたわ。行ってくるわね?」  馬鹿とアホは、ぼんやりババアを見送った。  淫猥にしてハードな音楽が流れる中、ババアはポールにしがみつき、エロく踊り始めた。  お客のお父さん達は、最初生娘っ娘はどうした?!ストリップは?!って暴動を起こしかけたが、眼鏡のLカップおっぱいの若いババアが登場し、ポールをベロベロ舐め回したり、足を開いてぶら下がったりして、おっぱいがブルンブルンしてるし、時たまスカートのスリットからオープンフロントのパンツが見えたりしたので、異常な盛り上がりを見せていた。  神よ。お許しください。  ルロイ・ルメイ司教は、小屋を真っ先に出て、跪いて神にすいませんしていた。 「恐ろしい光景を見てしまいました」  外で待っていたブレイジア・イグニスが、何してんのこのおっさん?って目で見ていた。 「鼻血を拭いなさい。ルメイ司教」  先日、ゲネプロで桃色の王子にやってもらったことを、そのままお返ししていた。
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