誤字脱字修正は終わりの見えない止まない雨のようだ

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 こんにちは。水無月礼人(ミナヅキレイト)と申します。  趣味をいつか実益(ゼニ)にしたいという欲望を隠さない素直な主婦です。仕事や家事の合間に小説を執筆しております。  この場をお借りして、執筆をする上で避けては通れない嫌~な敵、誤字脱字くん達について書き綴りたいと思います。私と同じように創作活動をされている方々に共感して頂けると嬉しいです。  読み専門の皆さんは、書き手にはそんな苦労が有るんだね~と、ニヤニヤしながら他人事として楽しんで下さい。  さて、これより本題に入ります。  誤字脱字くんは寂しがり屋なので、一人ではなくお友達と一緒に遊びに来ることが多いです。  筆者の国語能力が低いと、大編隊を組んで現れます。  誤字脱字くん達を確認した筆者は、自嘲の笑みを浮かべながら、容赦無く彼らを片っ端から抹殺していきます。  皆さんは、ゲームコーナーでモグラ叩きをした経験がお有りでしょうか?  古いゲームなので、今は置いていないお店の方が多くなりました。  ご存知ないヤングの方の為に説明致しますと、台に空いた沢山の穴からモグラがピョコピョコ上半身を覗かせるので、それをフニャフニャしたハンマーで楽しく撲殺するゲームです。  序盤は一匹のモグラがゆっくり登場するだけですが、徐々に数とスピードが増していき、終盤にはこれでもかというモグラ祭り。  ほぼ全ての穴から生えたモグラには、片手ハンマーでは対応し切れません。二人プレイ用のハンマーも借りて、二刀流で彼らに挑むことになります。(お店によっては怒られますのでご注意を)  ちなみにゲーム終盤はとても忙しいので、プレイした人間はイケメンだろうが美人だろうがもの凄い形相となります。  誤字脱字くんとの戦いは、このモグラ叩きに似ていると思いませんか?  どんなに修正、あるいは叩いても、タケノコのようにニョキニョキ出現する彼ら。予期せぬ所から飛び出す彼ら。  ゲームでは通常60秒でタイムアップですが、執筆中は退治が終わるまで戦いは続きます。タイム機能は創作の神によって壊されています。  その誤字脱字くん達の強さは、様々な要素によって確定します。  まずは言わずもがな、筆者の国語能力。  低い程に強敵となります。と言いますか低いと誤字脱字をしても気づきません。読者さんから指摘されても「んんん?」となります。  次に筆者の集中力。  疲れている時の執筆は控えましょう。物語と一緒に不思議な日本語まで創造することになります。  と、何度周りから忠告されても、自分自身で解っていても、筆者は眠い中で作業を続けようとするのですよね。  寝たらいいのに。ここはあなたの家、雪山ではりません。眠っても低体温症にならないし、コヨーテにも襲われません。  それでもやめない。何が彼や彼女を駆り立てるのか。  それはズバリ、そこで書くのをやめたらキリが悪いから。(あと毎日更新をついうっかり宣言しちゃったから)  作中で登場人物達はバトルの最中だったり、一世一代の愛の告白をしていたりするのです。  だからその場面を書き切るまでは、作者と言う戦士に休息は訪れません。途中でやめたらスッキリしないのです。気持ちが悪いのです。  読み手の皆さんは覚えておいて下さい。書き手にとって中途半端な所で筆を止める行為は、「お尻を拭いていない」と同意語になります。  さて次の要素は……老いです。若い筆者さんは大丈夫ですね。  四十代の後半に差し掛かりますと、人間は近くが見えにくくなります。老眼の初期症状が出始めます。  こうなってしまうと、誤字脱字くんを見逃す確率が高くなります。  二年前に食品表示を見ようとして、手元からパッケージを遠く離している夫を見て私は笑いました。おじいちゃんみたいだわ、と。  そして現在、小説執筆中に入力画面の明朝体がぼやけて見える私が居ます。思い出しました。私は夫の二歳下でした。ゴシック体での執筆が基本です。  老眼を笑う者は老眼に泣くのです。  誤字脱字問題で意外な伏兵となるのが、予測変換です。  途中まで文字を入力すると、欲しいのはコレでしょう? と、候補の言葉がニュッと出てくる便利機能です。  予測変換は、執筆時間を短縮してくれる頼もしい助手であると同時に、筆者が望んでいない言葉を紡ぐ悪魔の機能でもあります。  例を出しますと、「退治」と入力しようとして指が滑り、「タイ人」をタップしてしまったり。「ハイファンタジー」と打とうとして、何故か途中で「ハァハァ」が予測変換第一位に来てしまったり。  私は「ハァハァ」を入力した記憶が有りません。忘れただけで過去に使ったとしても、絶対に多用はしていません。「ハァハァ」がデフォルトで出てくる文章ツールはすっげぇ嫌です。  ここまで誤字脱字くんの誕生の仕方を挙げてまいりましたが、では、彼らを倒す有効な手段とは何でしょうか?  筆者が気をつける。基本ですね。しかし筆者さんの大半は投稿するまでに何度も何度も読み返して、間違いは無いかチェックを行っています。それでも消えてくれない彼ら。  そこで満を持して登場するのが、そう、『読者さんによる二重チェック』です。(人は疲れた時、他力本願に陥りやすくなります)  筆者が取り零した誤字脱字くんを、読者さんが代わりに狙い撃ちで仕留めてくれます。  何度も誤字脱字報告を受けている私の心には、毎回こんな台詞が響き渡ります。 「俺の仕事は終わったな、あばよ」  誤字脱字くんをピンポイント攻撃してくれた読者さん。凄腕です。ニヒルなイケメンです。次元〇介です。  しかしそんな便利機能(読者さんに何てことを)にも、大きな問題点が存在します。  それは、読者の方々の善意によって成り立つシステムだということです。  筆者側は「見つけてもらえてラッキー、うはははは」な状態ですが、読者さんには何の得にもなりません。完全なる献身なのです。  世の中は助け合い。ならば私は自分自身が他の筆者さんの作品を読んだ時に、誤表記が有ったら知らせようと考えました。実際に怪しい慣用句を発見しました。  だというのに私は尻ごみをして報告をしませんでした。その慣用句の使い方が本当に間違えているかどうか、いまいち自信が持てなかったのです。  私は政治家の決意表明と同じくらい、自分の知識を信じていません。  私は与えるだけで何も返せない、ただのクズに成り果てていました。  次元……読者さんは言ってくれるでしょう。 「気にすんな、一緒に誤字脱字のヤローを倒しに行こうぜ」  こちらが心配になるレベルのお人好しの方々です。  その優しさにどっぷり浸かっても良いのでしょうか? 否。  私は一度甘えることを覚えると、とことんまで堕落する人間です。クズ度が通常の三倍に加速します。赤い彗星のクズです。  やがて私はシンプルな結論に到達するのです。  自分でやるしかない。最後に勝つのは気力と体力だと。  だからと言って、一人では誤字脱字くんを取り逃がしてしまうでしょう。今までがそうでしたから。  二重チェックを超えたトリプルチェック体制にしようと分身の術を使っても、馬鹿が三人に増えるだけです。文殊(もんじゅ)にはなれません。そもそも分身では同一人物です。  結局最後には、読者の方々の手を借りることになるのです。  それでも。少しでも読者さんの負担にならないように、作品を純粋に楽しんで頂けるように、自分にできることはやらなければ。集中して、誤字脱字くんを一人でも多く仕留めなければ。  そんな訳で今日も私は、誤字脱字修正という名のモグラ叩きに勤しんでおります。もう誤字は無いだろうと自信を持って送り出したエピソードだというのに、更新した直後に間違いに気づいて頭を抱えるまでがセットです。  これはまるで止まない雨の中に居るような心境です。  雨……。  それならば信じましょう。いつか止まない雨が上がって、晴れ晴れとした空を拝める日が来ることを。  しかしその前に、「止まない雨」が「上がる」表現が矛盾していると指摘されそうな予感がします。 了
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